銚子市市議会議員

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「地域医療研究会全国大会2011in高知」参加報告

2011,11,10
加瀬庫蔵

・地域医療研究会とは

 地域医療研究会の前身は、1975年に浅間総合病院主幹で行われた外科医療研究会でした。それが、1980年に諏訪中央病院が主幹となり地域医療研究会全国大会へと発展し、1986年以降2年ごとの開催となり現在に至っています。

  地域医療研究会の目的は、「保健予防・治療・リハビリテーションそして福祉との連携に至る包括的な地域医療の理論と実践について、情報交換・研究を促進するとともに、地域医療に従事する医師等の育成・研修を行う」(松本文六地域医療世話人代表)で、今年は高知市において10月29日〜30日の日程で行われました。

 今年の全国大会は、「地域医療と社会保障」をメインテーマに「少子・高齢化社会での社会保障そのとき医療は…介護は・・・」のサブテーマをつけ、特別講演と基調講演、そしてシンポジウムと7つの分科会が開かれました。以下報告します。

・特別講演「地域医療の心をどう伝えるか」鎌田實・地域医療研究会名誉会長

 地域医療研究会発祥の地である諏訪中央病院名誉院長・鎌田實氏による「地域医療の心をどう伝えるか」は、多くの参加者の心に響く内容であったと思います。

 37年間地域医療を担ってきた経験を、「展開してきた健康づくり運動は、地域の公民館へ出張講演する事80回。その結果、脳卒中が多く不健康で早死にだった地域が、健康で長寿の地域になり、地域の医療費も安くなりました。早くから往診や訪問看護に取り組み、日本では初めての身体障害者のある老人デイケアも開始しました」と報告されました。

 さらに、「諏訪中央病院は、二次医療圏のナンバーワンホスピタルではなく、ナンバーツウホスピタルです。ほどほどの高度医療とほどほどの救急医療を行いながら、地域住民にとって『あたたかな医療』とは何かを考え実践してきました。僕は年に一度、医学生や研修医を対象に『鎌田塾』を開いています。本当の講師は地域の人たちです。地域の人たちが集まり、若い研修医たちに住民が望んでいる医療について語ります。住民自身が、自分たちの地域を支える医師たちを大事に育てていくのです。僕もこうやって地域の人たちに育ててもらいました」という経験を話しながら、東日本大震災に対して、「医療用酸素がない」「薬がない」「医師がいない」「看護師がいない」というSOSを受け、医師団として初めて福島第一原発の30キロ圏内に入り、5月末まで医師と看護師が交替で支援を続けた報告がありました。

 鎌田医師は、「『困っている人を助ける』というテーマと、地域の在宅ケアを担う看護師や開業医、疲れ切っている病院のER部門など『支える人を支える』をテーマにした活動を行っています」と述べているように、「相手の身になって考える」「自分が寝たきりになったらどうするか」「弱い人は声をあげない」という言葉は心に残りました。

・基調講演「少子・高齢化社会での社会保障」・権丈善一慶応大学教授

 日本医師会医療政策会議委員である権丈教授の、「少子・高齢化社会での社会保障」に対する問題意識は、「(日本の財政は)病気でいえば末期に近く、生き抜くためには『大幅な負担増』という手術はやむを得ない」という事でした。

 その根拠を次のように説明しました。

 「財政がここまで悪化したのは、過去20年、高齢化が急速に進み、社会保障に係る費用が膨らんだのに、GDPに占める税や社会保険料の割合を全く引き上げなかったからだ。それにリーマン・ショックが拍車をかけた。多くの人が信じているように、政府が大きすぎたり、無駄が多かったりしたからではない。むしろ、世界一の高齢国としては社会保障の規模は小さすぎるくらいだ。

 少子化も欧米より急速に進んでいる。すでに私たちは、北欧のように『高負担・高福祉』は望めず、次世代には高負担なら中福祉、中負担なら低福祉という未来しか残せない。『増税すれども社会保障費は抑制せざるを得ない』という悲しい未来も遠くない。だが、負担増への合意が出来れば、社会保障の綻びを修復しつつ、財政再建を果たせる可能性はある。もっと『増税しなくてもやっていける』と主張する政治家はまだまだいる。彼らにもう一度国政を握らせ、それが失敗して初めて、国民は現実を直視できるのかもしれない。かつて福沢諭吉が言ったように『この人民ありてこの政治あるなり』なのだろう」

 このような内容で、基調講演が行われました。

 私は考えます。何故日本の財政が悪化したのかです。一言でいえば、税金を払いたくても払えない国民が異常に多く存在している事実です。規制緩和と称して、非正規労働者が異常に増えました。さらに、年収200万円に満たない人がかなり多くを占めるようになりました。この人たちが、普通に税金を払えるようになれば、問題となっている財源のほとんどが賄えるようになります。銚子市では、65歳以上の高齢者の内年間200万円以上収入のある高齢者は10%以下です。逆に、年間200万円以下の高齢者のうち、80万円以下の高齢者がかなりの比率を占めます。この人たちに負担増は無理です。

 確かに、社会保障費の総額を増やすことは必要です。問題は、国民負担を増やすことが真の解決ではないと思います。この事がこれからの研究課題です。

・メインシンポジウム「地域医療と社会保障」

 はじめに、コーディネーターの松本文六・社会医療法人天心堂理事長より、以下のような問題提起がありました。

 「2007年以後、日本では、一年ごとに首相が交替し、政治は極めて不安定です。その中で、1000年に一度といわれる3・11の巨大津波大震災は"想定外"の原発事故をもたらしました。この大災害に国は的確な対応と指示が出せず、ついにまたもや首相交代となりました。不安定政治の中で、今後の社会保障制度について7月1日≪社会保障・税一体改革案≫(以後『一体改革』と記す)が内閣に報告されました。(この成案は"閣議決定"ではなく"閣議報告"という形がとられています)。一体改革案は自民党時代の「社会保障国民会議最終報告」(2008.11.4)を基本にしていますから、ここ数年の、日本の社会保障はこの流れに沿って作られてゆくと考えられます。一体改革案は、当然ながら、少子高齢化社会を射程に入れたものですので、これを中心に、シンポジスト各氏の立場から視点と考え方を開陳して頂きます」

 その後、石井映禧(いしい えいき)医療法人財団石心会理事長より、上記提起を踏まえ「救急医療と医療再生に関連」した提起がありました。また、阿部知子(あべ ともこ)社民党衆議院議員より「少子社会における社会保障のあるべき姿」について、さらに、近藤克則(こんどう かつのり)日本福祉大学教授より「2000年代に入り、健康格差が急激に進んでいく中で、この一体改革案がそれを改善する方策になりうるか」。そして、梅村聡(うめむら さとし)民主党参議院議員より「政権の中から、医療問題全般にわたった将来の見通し」について、それぞれの見解が示されました。

・分科会U「病院の機能分化のゆくえ」

 分科会は、分科会T「精神医療の現状と課題」、分科会U「病院の機能分化のゆくえ」、分科会V「医師臨床研修制度の在り方」、分科会W「貧困と医療」ネグレクトの問題―「虐待の陰に貧困あり」、分科会X「地域包括支援センターの役割と課題」、分科会Y「へき地医療の現状と課題」、分科会Z「在宅医療・訪問介護の現状と課題」の7分科会で開催されました。

 私は、分科会Uに参加しました。内容的には専門的なことが多く、理解できたというよりも、考えることが多くなったという事が本音です。考えさせられたのは、「地域一般病床」に対する猪口雄二・全日本病院協会副理事長の提起でした。内容は、以下の通りです。

・地域一般病棟について・猪口雄二氏提起

 「地域一般病棟」は、2001年9月全日病を中心に纏められた概念です。当時の一般病棟を担う概念の中で、急性期医療を担う病院は、急性期専門病棟と地域一般病棟に機能分化することが望ましいと分類されました。

[2001年9月の概念]

急性専門病棟 :: 医療ニーズの高い急性期医療に特化した施設

地域一般病棟 :: リハビリテーション機能・ケアマネジメント機能・高齢者にふさわしい急性期医療・後方支援機能・ターミナル対応機能を持つ施設

 その後、全日病は「地域一般病棟」の概念形成と診療報酬上の評価を要望し、平成16年改定において「亜急性期入院医療管理料」が新設されました。

 この概念を提唱してから10年になりますが、その間に医療・介護を取り巻く状況は大きく変貌してきました。それは、医師・看護師不足に代表される「医療崩壊」です。これを打破する方法の一つが「地域一般病棟の再認識と考える」として、以下のように提起されました。

[地域一般病棟の再認識の提起]

急性期における医療連携


一次医療圏、生活圏における住民、在宅療養中の患者、介護保険施設入居者、などの急性期医療(軽症〜中等症)に、24時間体制で対応し、必要に応じて地域(二次医療圏)の基幹病院に紹介転送する。

亜急性期の医療連携


リハビリテーション、病状不安定、抗癌剤使用など、急性期以降の引き続き入院を担う。

救急における医療連携


救急指定、救急対応として主として二次救急を担うが、必要に応じて救命救急センター等に転送する。また、これらの高次機能救急施設で、高度な入院機能の必要ないものの入院が必要判断された場合、転送受け入れを行う。

在宅療養支援


在宅療養支援病院として、また在宅療養支援診療所と連携して、在宅療養を支援する。

 「地域一般病棟」の存在意義を再認識し、多くの地域で中小病院が中心となって、連携を基軸とした地域医療を実践することが重要です。その結果、基幹病院の急性期医療も充実され、地域の住民も介護施設等の入居者も安心して生活できる、地域包括ケアが実現できるのではないだろうか。という提起でした。

 この提起は、銚子市立病院を真に再生する大きな視点となるのではないだろうか。そのように考えさせられた問題提起でした。

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