銚子市市議会議員

加瀬 庫蔵(かせ くらぞう)の公式サイト

Kurazo Kase Official Web Site


第8回地域医療政策セミナー報告

2012年10月25日
加瀬庫蔵

 東京都市センターホテルにおいて、第8回地域医療政策セミナーが開催された。内容は、「岐阜地域における当院の役割と今後の方向性〜メガトラス工法と地域連帯パスを中心に〜」と題して岐阜市民病院院長・富田栄一氏と、「住民と話し合う医療」と題して一関市病院事業管理者・佐藤元美氏の講演を受けた。

医療施設に恵まれている岐阜市
〜検討の余地がある「病疹連携〜地域連携パス」〜

 岐阜市民病院の富田院長によると、岐阜県全体としてはかなり少ないが、岐阜市は東京都よりも医師と医療施設は人口比においても多いとの事であった。岐阜市には、県立・大学・そして市民病院と大病院と言われる病院が3つあり、その他にも多くに病院が存在していると紹介された。
 銚子市と状況が違う中で、特に感じたのは「病診連携〜地域連携パス」の取り組みであった。病診連携とは、今までは大きな病院(総合病院)へ行けば何でも診てもらえるという病院完結型の診療であったが、今は最新の機器・設備で専門的に診てもらえる医療の専門化が進んできた。そこで高額な機器を一つの病院で持つよりも専門的に地域で連携して診療が出来るようになることが望ましいという事から、岐阜市では富田院長が中心になって「病疹連携〜地域連携パス」による診療を始めた。内容は、専門的なので詳しくは理解できなかったが、医療の規模は違う銚子市でも「病疹連携〜地域連携パス」は必要かもしれないと思った。特に、医師会と高額な医療機器を持っている病院との連携を、患者中心に診ていく事からすれば、難しいとは思うが検討の余地はあるのではないかと思えた講演であった。
 狭い土地での病院の建て替えを行ったメガトラス工法は、今日の技術のすごさを改めて考えさせるものだった。5階建ての病院を10階建てに、入院患者を病室の移動だけで同じ場所に作り変える工法である。患者の負担は少なく、仮設の病院も必要なく出来るという事から、注目される工法だという事だ。
 そこで思った事だが、銚子市役所の耐震診断の結果、市役所は使えなくなるとの事で移転が取りざたされている。今の技術で、耐震対策は本当にできないものか改めて考えさせられた。今後の検討課題である。

地域医療包括ケアシステムづくり
 2日目は、13の分科会に分かれそれぞれのタイトルに沿って討論や意見交換が行われた。私は、第5分科会「医療と介護の連携による地域づくり」〜活力ある安心社会の実現のために〜に出席した。参加者は、37都道府県から189人と報告されたが、他の分科会はこの倍くらい参加していたそうだ。
 この分科会は、「高齢者の独り暮らしを支える地域づくり〜地域包括ケアをいかに作り出すか〜」のテーマで講演された井上信宏信州大教授。「東日本大震災被災地の医療・介護・福祉」のテーマで講演された岡田広行東洋経済新聞記者と、地域包括ケアを実践している各地域から、2つの要請レポートと4つの自主レポートが報告された。
 地域包括ケアについて、特に井上教授の提起は大いに参考になった。「地域包括ケアシステムとは何か」という事について、教授は「地域課題の後背には数多くの生活課題があり、生活課題には地域の固有性・特殊性・複雑性があることが分かる」という認識と、「課題解決には生活の場にできる限り近いところで取り組む必要がある」いわゆる生活支援が不可欠となることを話された。その上で、:専門職組織を主体とする連携の約定とそのイメージ図(厚労省の):ではなくて、「@地域住民と現場の複数の専門職による:支援経験の蓄積:、Aその過程を通じてつくられる:顔の見える関係:、Bそれらをもとに地域社会の中で醸成される:信頼の束:、Cそれらを構築するための:制度基盤:」が話された。要は「厚労省のイメージ図からはずれた取り組みの実例」を検証して、それを9項目に集約したらこのようになったという事が話された。
 これらの話を聞きながら私は市立病院の再生を考えていた。地域医療包括ケアシステムづくりは「街づくり」の観点からすべてが提起されていた。市立病院の再開は、あえて「市の再開方針は持たない」ことを言明し、とにかく医師免許を持っている医師を集め、「どのような医師が来るかによって病院の性格が決まる」と言ってはばからない野平市長や再生機構の田中副理事長らによって運営されている。
 「銚子ショック」と言われた突然の休止から再開に至る経過は、「銚子における地域医療の課題は何か」とか「高齢者の現状は」とか「市民の疾病状況は」などの分析は何もなく、「民間病院がこれほどある中で、何故市立病院が必要かとの声がある(市立病院は必要ないかのようだ)」「病院再開は市民の要求だからやる(自分の意思ではないかのようだ)」「どのような医師が来るかによって病院の性格が決まる(再開の理念・方針を持たない)」「休止から再開は超難問、専門家集団に任せるしかない(再生機構にすべて丸投げ)」という市長の考え方で市立病院が再開された。地域医療は、地域医療包括ケアシステムの要であり、まさに「街づくり」の観点からその実現を目指さなければならないのに、あえて「市の再開方針は持たない」中で、再生機構に丸投げして市立病院を再開した事が、異常な病院経営を生み出している。改めて、そのことを考えた分科会であった。

「良い医療は役に立つ、住民と一緒に作り上げる」と佐藤院長
 今は、合併して一関市国保藤沢病院となっているが、私が銚子市立病院再開に対して、最も注目してきた病院が合併前の国保藤沢町民病院であった。
 私が思う藤沢病院の特徴は、「病気を診る医療から、暮らしを診る医療」を住民の立場に立って「住民と一緒に作り上げる」事を追及している。その様に私は感じている。診療科は、内科常勤4名、外科常勤1名、整形外科常勤1名、放射線科常勤1名、非常勤で整形崖・内科・神経科を持ち、一般病棟54床(利用率90%)の病院である。この人数で、「二次救急輪番に参加」し「医師会休日当番医」を受け持っている。
 内容的には、へき地・医療過疎地であっても医療に質の向上を目指し、その事により「良いスタッフの確保」が出来「患者満足度が向上」するし「医療過疎=質の悪化ではなく更なる医療過疎の悪循環からの脱却」を目指している。目標は、地域医療包括ケアのシステムをつくり、住民がそれを理解している事である。
 それに比べて銚子市は、とにかく医師免許を持っていればどのような診療科でも、何歳の医師でもよいから来てもらい、「どのような医師が来るかによって病院の性格が決まる」というような状況で、金に糸目をつけず医師確保をしている状況である。これでは、志を持って地域医療に取り組もうとする医師は銚子へ来ることを二の足を踏むようになるのではないか。
 まず銚子市が市立病院再開の理念を明確にし、病院側と一致させ、その立場を銚子市と病院が全国の医療関係者へ呼びかける事である。銚子市にはここがない。私は致命的と思っている。これが、再生機構の病院運営を不透明にしている最大の原因である。
 そのように感じたセミナーであった。

ページTOPへ