2012年06月議会報告
注) 2012.09.19 赤字にて文章訂正しました。
トピックス
今議会の焦点は住民投票条例
「専決処分をしない」を条件に継続審査
2012年6月議会に提出された議案は16議案でした。加瀬くらぞうは、市長の「専決処分をしない」との約束を総務企画常任委員会議事録に残して継続審査となった住民投票条例を除く13議案に賛成しました。しかし、議案第6号「銚子市公共施設整備等基金条例について」と議案第7号「銚子市市税条例の一部を改正する条例制定について」は反対しましたので、以下焦点になっています住民投票条例と反対した議案の内容について報告します。
「市立病院の存続か廃止」を求める住民投票の狙い
問題は、市立病院を人質に再生機構の不透明性と無原則な資金投入
「赤字補助金は高いか?高いならやめるか?」と市民の迫りながら、「市立病院の存続か廃止かの選択に関する直接投票条例の枠組みは至上命題だ」(広報ちょうし)として、今議会に提出されたのが住民投票条例です。
第1次野平市長時代、加瀬くらぞうから「大学誘致で92億1500万円の補助金は住民投票で」と言う質問に対して、野平市長は「選挙公約が大学誘致で市民の信任を得ている、これを住民投票と言わず何というのか」(H15年3月議会)と答弁しています。今回も、市長リコールや野平市長の選挙公約で「市立病院の存続」は明確になっています。なのに「市立病院の存続か廃止」を求めた住民投票を行うとしています。その狙いはどこにあるのかです。
問題は、「赤字補助金は高いか?高いならやめるか?」と市立病院を人質に、再生機構の不透明性と無原則な資金投入です。不透明性とは、笠井・轟両院長の不可解な退職、相次ぐ常勤医師の退職、病院内部での裁判、労基署から10項目にわたる是正勧告や病院収支見込みの不十分さなど法人としての不適格性の露呈、医師でない理事の高額報酬の非公開、東京本部会計と病院会計の異常な操作、退職した医師に対する誹謗中傷の繰り返し、東京事務所の存在や医師紹介手数料・宣伝広告費の過大消費等々です。これらは、理事会議事録が公表されないので全く不透明なままです。
不透明性の是正は議会の意思です
前回3月議会では、「銚子市立病院に対する第3者評価制度の導入を求める陳情」「再生機構田中副理事長の報酬の是正を求める請願」そして、指定管理料減額を求めた「是正7項目」が全会一致で議決されました。これら不透明性の是正は、市立病院再生に協力した多くの市民と全議員の切実な思いです。
以下は是正7項目の内容です。
1、 |
宣伝広告費(H23年度7429万7000円)について、費用対効果を検証し節減を図ること。 |
2、 |
医師招へいに当たっては、医科大学及び医療機関へのアプローチに努めると伴に、医師紹介(派遣)
会社による医師招へい事業の在り方を検討し、医師招へい手数料の削減を図ること。 |
3、 |
理事報酬の額及び決定方法の妥当性について第3者評価制度を実施し、削減を図るとともに情報を
開示すること。 |
4、 |
再生機構東京事務所の存在及び人員の見直しにより、経費節減を図ること。 |
5、 |
労使関係の健全化とコンプライアンスを徹底すること。 |
6、 |
再生機構の常勤理事の医師給与については、法人の病院会計で支出し、(病院の赤字を少なく見せ
るため)本部会計(財源は指定管理料)での処理(付け替え)は行わない事。 |
7、 |
病院再生室においては、指定管理料の支出の妥当性を事前にチェックし、安易な承認を行わない事。 |
是正7項目に対する市長の態度
田中氏は「銚子の給与水準の人たちではない、それを覚悟しなければ病院再生は出来ない」と市長
全議員の要求である「是正7項目」について市長は全面否定です。特に東京事務所については「東京事務所は最も重要だ、この本部があってこそ成果が得られている」との見解で、田中副理事長の報酬についても「監査結果を待って必要なら検討すればよい」との態度ですが、市長は監査請求するつもりはありません。
田中副理事長の報酬は、議会で
年間180万円月額180万円くらいになることが議論されています。これに対して市長は、「銚子の給与水準の人たちではない。それを覚悟しなければ病院の再生は出来ない」と事実上認める答弁をしています。今それを言うなら、なぜ最初からそのように説明しないのかです。「準備機構」時代田中氏の報酬について、弁護士の理事から「田中氏の報酬について市民の理解を得られないのでは」(要旨)との提起に対して、野平市長が説得をしている議事録があります。「機構」内部にも疑問がある田中氏の報酬について、市長が何故隠すのかです。医師の報酬は一切問題にしていません。田中氏の報酬について、市長がその様に思うならキチンと説明し公表すべきです。
市長の言う「赤字補助金の否決は病院つぶし」について
市民や議会の思いを拒絶し、病院を危なくしているのは市長です
市長は、盛んに「病院をつぶさないと言いながら、赤字補助金を否決して病院をつぶそうとしている」と言い続け、この事が住民投票条例提出の大きな根拠であるとしています。
日夜患者を診ている医療スタッフの努力は評価しています。しかし、病院を管理運営している再生機構については、全議員が疑問を持っています。それが前3月議会で示された請願や陳情、そして指定管理料削減に伴う是正7項目です。
なぜこの様な問題が起こるのかです。市民や議員は市立病院の再生を応援したいと思っています。しかし市長は「プロ集団に任せている」「再生をお願いしている側は見守るだけ」として、「再生機構」が行った院長経験者の不可解な退職、医師でない田中福理事長の高額報酬に代表される様々な事、それらを議論している理事会の議事録さえも秘密しています。まさに、誰もが否定できない市立病院を人質に、不透明な再生機構の運営や無原則な税金投入を容認し、しかもその中心にいる医師でない理事の不可解な処遇についても様にし続けています。
市長は、これらが改善されれば市民・議員・行政が一緒になって病院再生に協力できることを知っているのに、あえて、再生機構とその中心人物である田中氏のやりたい放題にさせ、市民や議会の思いを拒絶しています。病院の経営が危なくなるように仕向けているのは市長だと言わなければなりません。
野平市長提案の住民投票条例の主な問題点
第1に、「市立病院の存続か廃止」が何故住民投票なのかです。多くの市民が指摘しているように、住民投票の結果で「存続」となれば不透明な再生機構の運営や無原則な税金投入が合法となります。「廃止」となれば「市民の結論」となります。どちらになっても市長の責任はなくなるとの考えのようです。極めて動機が不純です。
第2に、「条例案」では、「骨子案」で批判の多かった市長発議(市長が決めれば議会にはかる必要なく住民投票が出来る)と議員発議はなくなりましたが、住民投票の「対象事項」が問題です。広島市では「市民球場を残したい」という住民投票について、市長が「住民投票の対象事項でない」と拒否権を発令してやらせませんでした。これと同じで、「条例案」では住民投票の対象事項を市長が判断するようになっています。常設型の住民投票条例は必要ですが、市長に拒否権を与える「対象事項」は設ける必要はありません。また最近では、原発の有無を求めた東京都や東金市の住民投票を議会が相次いで否決・拒否しました。一定の成立要件を満たした署名数があれば、神奈川県大和市のように市長も議会も拒否できないような条例にすべきです。
第3に、「骨子案」では必要な署名数が6分の1となっていて、成立要件も「成立要件を設ける事により住民投票の不成立を目的にボイコット運動が行われる可能性もあり」として「設けない」としていましたが、条例案では必要な署名が「12分の1」になり、成立要件が「投票資格者の3分の1に満たない時は成立しない・開票を行わない」となった事から、ボイコット運動が行われる可能性を残した条例になります。開票は必ず行うようにすべきです。
第4に、「骨子案」でなかった「住民投票を目的としてする戸別訪問」の禁止が明文化されています。住民投票に関する「情報の提供」が市長で、戸別訪問が禁止では、市長に有利な住民投票になってしまいます。
新たに特老ホームをつくる目的を明確にして「銚子市福祉施設整備基金」を残し
『市町村マスタープラン』策定にこの基金を位置付けるべき
議案第6号「銚子市公共施設整備基金条例について」です。これは「銚子市漁港修築基金」「銚子市観光施設等整備基金」「銚子市福祉施設整備基金」「銚子市体育施設整備基金」を「今後見込まれる公共施設の整備及び修繕に必要な財源を確保」と「基金の弾力的な運用を図るため」として、4つの基金を統合する提案です。統合した基金は、これから議論されるであろう市役所庁舎の耐震対策にも活用できるとしています。
「銚子市福祉施設整備基金」以外3つの基金は、それぞれ残金が10万円以下という事からも統合して「今後見込まれる公共施設の整備」の財源にしてもよいと思います。しかし、「銚子市福祉施設整備基金」は、新たに特別養護老人ホームをつくるという目的を明確にして、残すべきです。
特別養護老人ホームの待機者は、2012年3月末現在308人です。待機者の内在宅で介護を受けている人は145人で待機者の半数、その内、介護度3以上で在宅で介護を受けている人は55.9%にもなります。
このような現状を踏まえた時、県内で銚子市だけが着手していない「将来の『市町村マスタープラン』策定」にこの基金を位置付けて、新たに特別養護老人ホームをつくるという目的を明確にした積み立てをしていく事が必要です。そのような提案をしてこの議案に反対しました。
「震災復興に関し、防災のための財源確保」は増税でなく
震災を受けた市民の立場に立った財源確保を考えるべき
議案第7号「銚子市市税条例の一部を改正する条例について」は、「震災復興に関し、防災のための施策に必要な財源確保」のためとして、個人市民税の均等割りを年額500円の増税と、法人市民税は若干の減税をしたうえで税額を10%上乗せの提案です。
個人市民税均等割りは、単身者で給与収入が93万円を超えると課税され、低収入の人ほど負担は重くなります。今度の震災で、屋根や壁、玄関などを修理している市民はかなりいます。その市民に「震災復興で、防災のための財源確保」のために増税とは何と無慈悲な事でしょうか。
この条例は、「震災復興に関し、防災のための施策に必要な財源確保に係る地方税の臨時特例に関する法律等に伴い」提出されたもので、個人市民税の均等割りは2014年6月から10年間、法人市民税は2012年4月から3年間とのことですが、この法律はすでに所得税の税額を2013年1月から2.1%上乗せを決めている中で提出されました。国の法律がそのように決まったからとストレートに増税を迫るのは問題です。震災の影響を受けた市民の立場にたった財源の確保を考えるべきです。そのような立場からこの議案に反対しました。