2014年09月議会報告
トピックス
「医療公社」設立関連予算成立
越川市長・市立病院を存続させる強い決意で提案
今議会における最大の焦点は、来年4月以降市立病院の存続と運営をどのようにするかです。越川市長は、「市立病院を存続させるという強い決意のもと、病院運営の公益性・透明性と経営力を高め、公立病院としての使命を果たすため、銚子市は(仮称)銚子市医療公社を設立します。来年4月より、銚子市立病院の指定管理者を『医療公社』に移行します」として、「医療公社」立ち上げの出えん金(費用)を含めた関連予算を提案しました。議会は全会一致で可決しました。
「銚子市立病院の方向性を検討する委員会」の答申
=現指定管理者では困難と思われる=
「医療公社」による市立病院の存続は、「銚子市立病院の方向性を検討する委員会」(2014年2月18日から6回に及ぶ検討)の答申を踏まえてのものです。
答申内容は、「香取・海匝地域の医療環境や、銚子市の医療・保健・福祉サービス、厳しい財政状況を踏まえて、公的医療機関として目指す方向を検討する」という目的を述べた「はじめに」と、「大事なのは住民を含めた関係者が合意をしていくプロセスである」と述べた「終わりに」を含めて「1、これまでの経過。2、銚子地域の医療・保健・福祉。3,2つの市立病院の運営と反省。4、今後の市立病院の方向性」という事です。
この内容を忠実に実行していくには、「市立病院に求められる役割と機能を十分果たし」「その組織は、@市のガバナンスが効き、A経営力のある人材を創出し、B透明性のある経営を行う団体でなければならず、これまでの経過から見ると、現指定管理者では困難と思われる」としています。
最も大事なのは「市立病院に求められる最低限必要な役割」が示された事
「4、今後の市立病院の方向性」の中で、1項目目に「市立病院に求められる役割」が提起されています。これは、市立病院に求められる「ミニマムな役割」いわゆる「最低限必要な役割」と理解するとの事ですが、2つ提起されています。
=医療・保健・福祉の推進役と旭中央病院との連携=
第1は、地域包括ケアシステムという事で最低限2つの役割があるとしています。1つは、医療・保健・福祉の担当者が「地域ケア会議」に参加し、地域の医療・福祉事業者と「顔の見える連携」を実現し、市立病院は医療・保健・福祉連携の推進役を務めるとしています。2つは、旭中央病院からの退院患者受け入れを視野に入れて、在宅復帰機能が高い病棟または施設を設置して、後方支援病院機能を展開していく役割を述べています。
=救急事業と地域連携=
第2は、救急事業です。旭中央病院に夜間患者が集中し飽和状態になっている事から、圧倒的に多い軽症患者の入院を含めた受け皿と、トリアージ(初期診断)機能を負うとしています。そのために「総合医の養成」と「地域連携」を挙げています。
越川市長・答申を受け「医療公社」による市立病院の存続を提起
=なぜ、現指定管理者では困難か=
この答申を受けて銚子市は「銚子市立病院の運営と医療公社の設立について」を提起しました。内容は(仮称)一般財団法人銚子市医療公社を設立し、指定管理者を「医療公社」に移行するという事です。
「現指定管理者では困難」と述べなければならない異常な事態がなぜ起こったのか。これらの問題は、何回も議会で指摘され続けただけでなく、是正を求めた議会決議が3回行われ、しかも、満場一致議決された内容でもあります。
特徴的な出来事は以下の通りです。議会で指摘された通り、多額の費用を使った東京事務所が医師派遣の拠点ではなかったことが判明し、年間7千万円にも及ぶ広告・宣伝費の内容も明らかになっていません。また、歴代院長を事実上解雇処分にした事や、医療とは関係のない職員の処遇を巡る裁判内容や費用についても不透明なままです。更に、労働基準監督署から10項目にわたる是正勧告を受けたり、赤字であるはずの病院が法人税を支払っていたり、医療機器ではリース契約で粉飾決算ともいえる状況が明らかになりました。あるいは、診療報酬請求の責任者が施設基準違反を承知で喫煙所に通い続けていたこと等々、医療法人の経営者としてはあってはならない事が連続して起こっています。そして、これら全てについて明確な説明がありません。
この様な状況を考えると、「現指定管理者では困難」との答申は当然の結果かと思います。
銚子市における財政再建の課題
「富津市、破たんの試算」(朝日新聞)より財政悪化の銚子市
銚子市の財政は、2〜3年で改善できるような状況ではありません。それは、人口減等に伴う歳入の減額がある中で、無計画な大規模事業を連発させた事により起こった起債(借金)の拡大による為です。この起債償還(借金返済)は修復不可能でしかも長期にわたった支出になっています。この事が財政悪化を長引かせている原因です。
「富津市、破たんの試算、2018年度に財政再建団体」(8月30日朝日新聞)と報道された富津市と比較すると、より以上に銚子市財政悪化の現状が分かります。
[富津市の場合]
朝日新聞では、「来年度には財政調整基金(市の貯金)が底を突き、2019年度までの財源不足は28億円に上り、2018年度には実質赤字比率が20%を超え、北海道夕張市と同様財政再建団体に転落する」と報道しました。その原因として、進出してきた企業などの固定資産税が減り、高齢化に伴い社会保障費の増大に対して財政調整基金(市の貯金)の取り崩しのみに頼った財政運営が指摘されています。
以下は、銚子市と富津市の財政比較ですが、地方債現在高や債務負担行為、実質公債費比率(市財政の中で借金に占める割合)を見ると、銚子市の財政状況は、「破たんの試算」と言われる富津市よりもかなり悪い状況が分かります。
[2013年度決算比較]
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標準財政規模 |
地方債現在高 |
債務負担行為 |
実質公債費率 |
財政調整基金 |
富津市 |
109億円 |
149億円 |
19億円 |
9.9% |
2億円 |
銚子市 |
153億円 |
314億円 |
67億円 |
14.5% |
160万円 |
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*標準財政規模: |
標準税収入と普通交付税を加えた額で真の財政実力と言えます。銚子市はこの10年間で10億2,000万円も減少ました。原因は人口減少に伴う交付税の減額が主な理由です。 |
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*地方債現在高: |
一般会計における借金総額で、銚子市は富津市の3倍になっています。 |
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*債務負担行為: |
年度を超える事業費をあらかじめ計上しておく金額です。例えば、3年間で10億円の工事をした場合、初年度で3億円の支出、2年目が5億円、3年目が2億円とした場合、初年度に3億円を支払って、同時に7億円の支払い額も決めておくもので、7億円が債務負担行為になります。 |
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*実質公債費比率: |
18%になると地方債(借金)の発行は国の許可が必要となります。銚子市は確実に18%に近付きつつある事が分かります。 |
[銚子市の場合]
この10年間で異常に増えているのは公債費(借金返済)です。公債費と扶助費(福祉等に使う)の増加分を人件費の大幅な削減でまかなってきたことが以下の「義務的経費3つの項目」で分かります。
[義務的経費の3つの項目]
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2002年度 |
2012年度 |
差 引 |
人件費 |
78億9000万円 |
60億12000万円 |
−18億8000万円 |
扶助費 |
8億4000万円 |
13億4000万円 |
5億円 |
公債費 |
20億5200万円 |
32億2600万円 |
11億7000万円 |
人件費は、職員数を10年間で211人・約25%減員しました。議員と職員の人件費で18億8000万円も減額してきました。
扶助費(福祉等に使う)は、児童手当や生活保護等国の財政措置があるものを除いた額で5億円の増加となっています。原因は国の政策による生活保護の増大や、障害者自立支援給付、児童手当など制度変更による給付の増加です。
公債費(借金返済)は、11億7000万円の増加となっています。特に保健福祉センター整備債、千葉科学大学整備費補助債、市立高等学校整備債の合計は7億9000万円にもなります。今後市立高等学校整備債と学校給食センター整備債の償還(返済)が本格化していきますので、返済額の減少はありません。
無計画な大規模事業で長期にわたる支出の拡大とは
前野平市長の下で行った四つの大規模事業の総事業費は241億円です。その内、2013 年度までの支出は74億円、2014 年度は13億円支出するようになっていますので、2015 年度からは154億円を支払うようになっています。
2014 年度まで、約3分の1の支出87億円でこれだけ財政危機に陥っているのに、2015年度からは、残りの約3分の2の事業費154億円を支出するとなっています。従って、厳しい財政状況はこれからが本格的になっていきます。
人件費を含めた歳出の削減は限界状態
一般財源の総額が大幅に減少する中で、扶助費、公債費の増大は今まで見てきた通りです。これに対して、人件費(職員給与費等)の減額や補助費等の削減、一律の歳出カットや事業仕分けで大幅な歳出削減も行いました。それでも不足する額については、財政調整基金の取り崩しで対応してきたのが実態です。従って、これ以上の歳出削減は限界に近い状態と言わなければなりません。
今後、歳入増についての検討が課題
銚子市は、歳入を増やすための「緊急改革プラン」を作成し、@未収金対策、A使用料・手数料の適正化、Bふるさと納税の推進、C施設等市有財産の有効活用をあげています。
人件費を含めた歳出削減が限界に近い状態の中で、今後は、人口減の中にあっても歳入を増やすことについて、どこの自治体よりも先んじて取り組む必要があります。
今後、歳入を増やす事についてあらゆる項目を明らかにし、全国で取り組まれている具体例を銚子市の実情に合わせた研究等、歳入を増やすためのシステムを早急に整備する必要があります。
9月16日「実践型地域雇用創造事業」採択
銚子市は、厚労省の「実践型地域雇用創出事業」の対象地域に選ばれました。地域の特性を生かして雇用を生み出す国の委託事業で、今年度からの3か年で総事業費1億9500万円、164名の雇用を創出するというものです。
この事業は「マグロの競り、おいしい朝食、犬吠埼灯台の日の出。これらを組み合わせて、健康メニューを開発し、朝の観光を磨いていく事で雇用を創出したい」「観光の魅力を、夜型から朝方に転換し、銚子の輝きを取り戻したい」(越川市長)との観光戦略を示しての応募が採択されたという事です。
9月18日「地域商業自立促進事業」採択
銚子セレクト市場の運営会社であるヒューマンライブ(株)が「てうし横丁」(旧十字屋跡地)の所有者である(株)松屋百貨店と協議して、今後の開発を手掛けるため、経済産業省の「地域商業自立促進事業」に応募し、市は支援改革書を提出したところ、採択されました。
現在、テナントは順調に集まっているとの事で、12月中にはオープンの予定としています。